こどももおとなも。みんなの笑顔が花咲くまちに

令和7(2025)年11月8日、仙台市泉区の「虹の丘コミュニティセンター」で、「第2回交流サロン『子どもと大人で楽しむボッチャ』」が開催されました。スポーツを通して世代間交流を図り、福祉の向上を目指すことを目的に行われるこのイベント。当日は、こどもから高齢者まで幅広い年代の77名が参加しました。

平成30(2018)年に始まった、こどもたちとの交流イベント

この大会を主催したのは、虹の丘地区社会福祉協議会(以下、地区社協)。
会長である西本久子さんは、もともとは熊本の出身。夫の転勤で仙台に来たものの、知り合いもおらず、転居当初は孤独な思いも感じたそう。特別養護老人ホームでのボランティア活動をきっかけに地域福祉に深く関わるようになり、以降、小学校での読み聞かせボランティアを20年以上続けています。

「私が会長になった2016年頃から『地域全体のこどもさんたちや若い方たちとも何かしましょう』という声が上がってきました。それで、2018年にこどもたち対象のクリスマス会を始めました。クリスマスとは関係ないけれど(笑)、カレーを作ってみんなで食べて、サンタの格好をしてプレゼントを配りました。こどもさんも30人くらい来てくれてにぎわったんですよ」と、西本さんは教えてくれました。

その後は、警察官による交通安全の紙芝居などのイベントを行い、好評を博しましたが、新型コロナウイルスのまん延によって5年間、イベントの中止を余儀なくされます。

「コロナが落ち着いた時に、ボッチャの道具を借りる機会があり、みんなで楽しみました。その時に『これならこどももおとなも楽しめる』と思って、助成金でボッチャの道具をふたつ購入しました。それが去年の第1回目のボッチャ大会のきっかけ。今年は2回目で、去年より10人ほど参加者が増えています」と、西本さん。

「虹の丘ルール」でこどももおとなも大盛り上がり!

ボッチャは、ジャックボールと呼ばれる白いボールに、赤と青のカラーボールをいかに近づけるかを競う、ヨーロッパ発祥のパラリンピック公式競技です。虹の丘のボッチャ大会では、公式ルールに則りながらも、少しアレンジした“虹の丘ルール”を適用しています。

地区社協副会長の田野崎博さんは「審判長がシニアクラブのボッチャの会長さんなので、いろいろ教えてもらいながら、会場の制約や人数を踏まえ、1コートあたりの広さを狭くするなど、参加者が楽しめるよう“虹の丘ルール”にしました」と話します。

ホールに3つのコートを作り、試合がスタートすると、こどももおとなも関係のない真剣勝負が繰り広げられます。さらに周りで見ていた人たちも「もっと右!」「いけー!」などの声援を送り、とても盛り上がっていました。

大会参加者で89歳の福田さんは「なんかこどもたちとできるって聞いてきたんだけど、楽しかったねぇ。ひ孫よりちょっと上の子と話してね。私のボールもいいところまで行ったんだよ!」と、うれしそう。

そして、試合で大活躍したひとりである中学3年生の長田さんは「去年の大会にも参加してとても楽しかったので、今年も参加しました。おじいちゃん、おばあちゃん世代の方たちと一緒にプレイしましたが、みんなとっても優しくしてくれました。来年は高校生になるけど、できるならまた参加したいです」と笑顔を見せてくれました。

そんな長田さんのお母さんは「虹の丘は、お隣同士とても仲が良くていいコミュニティ。分からないことがあれば教えていただくなど、町内会でもすごくよくしていただいています」と話します。

家族の新たな一面を発見することも

地区社協副会長の佐々木啓一さんは「今日も家族で申し込んでくれた方もいてね。そういうのができるっていうのはとてもいいと思いますね」と笑顔。

田野崎さんも「こどもは家庭の中での親の姿しか知らないので、ボッチャを一緒にやることで、普段とは違った一面を見ることになるでしょう。例えば投げて、ヒットして、『うわぁすごい』って周りからお母さんが褒められるじゃないですか。そうするとこどもにとっても高揚感があるんですよ。そういう面が素晴らしいと思います」と話します。

こどもたちは地域で育ち、地域が育てる

地区社協主催のボッチャだけではなく、各町内会でも、七夕やスイカ割りなど、様々な世代間交流イベントがあるそう。

「4丁目町内会では、高校生、大学生のボランティアさんが7月、8月に必ず来てくれて。本の読み聞かせなんかをしてくれるんです。こどもたちも若いお兄さんお姉さんが読んでくれるのがうれしいみたい。こどもたちが大きくなった時に『地域でこういったことをしてもらっていたよね』と思ってくれたらうれしいです」と、西本さん。

地区社協として活動する中で、こうしたイベントの準備が大変ではないか尋ねると、「大変だと思ったこと、ないんですよ」と微笑みます。「地区社協は全員が福祉委員で、町内会でも集会所で福祉委員がサロンを開いていたり、普段から皆さんチームワークがいいんです」と、日頃の協力体制があり、地区社協が一丸となって取り組んでいることを教えてくれました。

そして西本さんは「ある方が『本当に虹の丘に来てよかった』っておっしゃって、その言葉がすごく残っているんです。なので、『ここにいてよかった』と思える地域にしていきたいですよね」と笑顔をのぞかせました。

佐々木さんは「世代交代をしながらも、地域がまとまっていけるような場をつくっていきたいですね。地域の人々との関わりを広げるという面では、こういうイベントなんかも、少しは役に立っているのかもしれないね」と。

田野崎さんも「こどもっていうのは地域の中で育つし、地域で育てる。人と人との間で成長していくものだから、自分がそのような環境で育ったことは認識してほしいです。そうすると自分がおとなになった時に、自分のこどもや地域のこどもに対してどのように接するのかを振り返ることができるでしょう」と穏やかに話します。

世代を超えて笑顔が広がる虹の丘には、こどもたちを包み込む優しいまなざしが確かにありました。そのまなざしの中で育ったこどもたちが、いつかおとなになったとき、自分が受け取った温かさを思い返しながら、次の世代へとそっと手渡していく――。
虹の丘では、そんな未来の姿を思い描くことができます。

そして、その未来に向けて歩みを進めているのが、西本さんたち虹の丘地区社協の皆さんです。世代をつなぐ場づくりを丁寧に積み重ねるその姿は、やがてこどもたちの心に小さな記憶となり、地域のつながりを受け継ぐきっかけへとつながっていくことでしょう。

©︎公益財団法人仙台こども財団