こどもたちの“やってみたい”を支える、多世代が集う場所 みんなのBASE

仙台市青葉区五橋。ビル1階にある「みんなのBASE」は、中高生を中心に、こどもたちが安心して過ごせる「安全基地」としてスタートしました。

今では子育て中の保護者や、孫の付き添いで訪れる高齢者など、世代を超えた関わりが生まれ、利用者は多い日で一日30人、月では延べ300人近くにのぼっています。

みんなのBASEには、いくつもの“顔”がある

みんなのBASEでは、一つの場所を拠点に、「○○BASE」と名付けられたさまざまな取組が展開されています。

こどもの発案から生まれた「だがしやBASE」をはじめ、
地域の集まりや相談の場として使われる貸しスペース「しぇあBASE」、
保護者向けの勉強会や学びの場を開く「まなびやBASE」、
さまざまな「やってみたい」という声を一緒に考え、形にしてきた「よろずやBASE」、
フリースクール「ふらっとBASE」など。

こうした取組は、利用者や地域の声を受け止め、さまざまな現場に立ち会う中で、広がっていきました。

「前向きな閉鎖」がひらいた、次の居場所づくり

「労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団」を母体とする「仙台地域福祉事業所けやきの杜」は、平成20(2008)年の設立以来、仙台市の指定管理者として児童館の運営や、小規模認可保育所の運営など、こどもの健全育成に取り組んできました。

その中で、かつては仙台市の児童クラブが小学3年生までしか利用できなかった時期に、夜遅くまで働く保護者の声を受け、“1〜6年生を夜8時まで預けられる民間学童”も運営していました。 その後、法律の改正で対象が6年生まで拡大したことで、民間学童は一定の役割を終え、職員の間で「前向きな閉鎖にしよう」という言葉が交わされました。

小学生を取り巻く環境は整いつつある一方で、中高生の居場所は依然として少ない——次に必要な支援は何かを考え始めた矢先、コロナ禍が訪れました。行き場が急に少なくなったこどもたちの姿を前に、「こどもの居場所が必要だ」という想いが、職員の中で改めて強まりました。

こうして令和3(2021)年、こどもの居場所としてみんなのBASEが開設されました。

児童館で学んだ「みんなでつくる」視点

みんなのBASEの根っこには、施設長の瀬戸さんが児童館勤務で児童厚生員として児童健全育成に長年関わってきた経験があります。「ここで大事なことは、ほぼ、こどもたちから教えてもらいました」と瀬戸さんは振り返ります。限られた時間や空間の中で、どうすればこどもたちが「今日、楽しかったな」と感じて帰れるのか。こどもたちの言葉や姿に向き合う日々の中で、「居場所づくり」の本質を学んできたと言います。

瀬戸さんが大切にしてきたのは、「ここは、おとなが一方的に用意する場所ではない」という姿勢です。こどもたちもまた、関わりながらこの場を形づくっていく存在だと考えてきました。安全面などからおとなが環境を決めざるを得ない場面がある中でも、こどもたちと一緒に考え、対話しながら場をつくる姿勢を持ち続けてきました。

瀬戸さんは、日々の関わりの中で感じてきたことを、次のように話します。
「こどもたちの存在があることで、周りのおとなたちの関係も自然とやわらいでいくんですよね。こどもが育っていく姿を一緒に喜びながら、地域の人も、私たちも、保護者も、みんなでつながっていく。そうした関係性が育まれていくことを、何度も実感してきました」。

児童館での10年以上の積み重ねが、「こどもをまんなかにして、人と人が一緒に育つ場をつくる」という、運営の考え方につながっています。

こどもの“やってみたい”が形になる「こども企画書」

みんなのBASEを象徴する取組が、こどもたちの“やってみたい”を形にする「こども企画書」です。きっかけは、利用者の小学6年生が、「引っ越す友だちのお別れ会をみんなのBASEでしたい」と瀬戸さんに相談したことでした。

「『コロナ禍で家に集まることが難しくて、ここで2時間だけできないか』という相談だったんです。『じゃあ、どんな内容にしたいのか、何人くらい集まるのか、必要なものは何かを、紙に書いてみて』と伝えたのが始まりでした」と瀬戸さんは振り返ります。

そのやりとりをきっかけに、カードゲーム大会や窓ガラスアート、夏まつりでの駄菓子屋1日店長など、こどもたちの企画が次々と生まれていきました。そこから現在の「だがしやBASE」も誕生しています。

この日、遊びに来ていた小学生に企画書で実現してみたいことを聞くと、「カラオケ大会」「お泊まり会」「ファッションショー」など、次なる“やってみたい”の声が次々と返ってきました。

瀬戸さんは、企画書を通して生まれる変化について、こう話します。
「誰かが実現している姿を見ると、『自分もできるんじゃないか』って思えるんですよね。その連鎖がすごく大事だと思っています。大切にしているのは、結果よりも“プロセス”です。どうしたいかを考えて、相談して、対話しながら決めていくことが大事。そのプロセスが、その子の自信や次の一歩につながります」。

「こども企画書」は、こどもたちが自分の考えを言葉にし、周囲と関わりながら実行していく力を育てる、みんなのBASEらしい取組として続いています。

地域にひらかれた居場所としての工夫

瀬戸さんが大切にしているのは、おとなが“教える側”に立つのではなく、こどもの想いを尊重し、同じ目線で関わることです。「こどもとは対等でいたいと思っています。おとなだから上、ではないんです。ここは学校でも家庭でもない、唯一の『フラットな場』だからこそ、目線を合わせて、一緒に考えたり話をすることが大事なんです」と瀬戸さんは話します。

実際にみんなのBASEには、地域のおとなが関わる場面もあります。その際に大切にしているのは、「何かをしてあげる」関係にならないこと。おとなも一人の参加者として、こどもの声に耳を傾け、一緒に考え、気付きを共有しながら場に関わってきました。

多世代が出入りする場所だからこそ、「こどもの想いを最優先にする」という考え方を、関わる人同士で共有しながら大切にしています。おとなも「支える側」としてではなく、その場に居合わせる一人として、こどもと同じ目線で関わっています。

居場所同士のつながりと、保護者への寄り添い

みんなのBASEは、宮城県内のフリースクールや居場所づくり団体が連携する「多様な学びを共につくる・みやぎネットワーク(みやネット)」に加盟し、団体同士が日頃からつながり、悩みや気付きを共有し合うことで、互いに支え合いながら活動を続けています。

「どの居場所にも共通する“同じ想い”があるから、こどもたちは体調や気持ちに合わせて複数の場所を行き来できるし、保護者にとっても『どこに行っても信頼できるおとながいる』という安心につながるんです」と瀬戸さんは話します。

フリースクールに通うこどもの保護者の中には、不安や緊張を抱えながら日々を過ごしている方も少なくありません。「まずはここに来て、こどもを安心して任せられる時間を持てたことが、お母さんたちの安心につながっている──そんな言葉もいただいています。お母さんがほっとできる時間を持てると、こどもも少しずつ元気になっていくんです」と瀬戸さんは語ります。

こどもたちへつなぐ未来

瀬戸さんが思い描く未来はシンプルです。
「ここを巣立っていったこどもたちが、いつか仲間として戻ってきてくれたらうれしい」。

みんなのBASEで育ったこどもたちが、次の居場所をつくる担い手になっていく——そんな未来を、瀬戸さんは願っています。

©︎公益財団法人仙台こども財団