12月20日、冷たい風が吹く中、太白区西中田の集会所「天神ふれあいセンター」には、次々と人が集まってきました。入口に立っていたのは、西中田第一町内会の鈴木久雄会長です。「いらっしゃい」。そう声をかけながら、人々を迎え入れていきます。
扉の向こうに広がっていたのは、外の寒さとは対照的な熱気でした。笑い声が響き、あちこちで会話が交わされています。
この日開かれていたのは、西中田第一町内会主催の「集まっぺクラブ」。第4回となる今回は、過去最多となる約70人が参加しました。1歳のこどもから95歳の大先輩まで、世代も背景も異なる人たちが「ごちゃまぜ」になって思い思いに過ごしています。
なぜ、この場所には、これほど多くの人が集まって来るのか。集まっぺクラブには、その理由が随所にちりばめられていました。
「集まっぺ」という名前に込めた想い

集まっぺクラブは、「こどもクラブ」という読み聞かせボランティアの中から、「こどものために、こども中心の活動をしたい」という声が上がったことをきっかけに、民生委員児童委員の草野恵子さんが、地域の集まりの場で呼びかけたことから始まりました。「最近、こどもの声を聞く機会が少なくなっている」「朝食を食べずに登校しているこどももいると聞く」──そんな声も、背景にあったと言います。
「最初は『こども食堂』のような活動をイメージしていたんです。でも、名前が『こども食堂』だと、どうしても対象がこどもたちだけに固定されてしまう気がして。鈴木会長からも、『もっと広い意味を持たせたいね』というお話があって、高齢者も、障がいのある方も、みんなが集まれるように、仙台弁で親しみを込めて『集まっぺ』という名前になりました」と話すのは、運営をサポートする中田西部地区社会福祉協議会の地域福祉活動推進員を務める佐藤せつ子さんです。

鈴木会長も深くうなずきます。「やっぱりイメージが固定されちゃうとね。ここには高齢者の方もたくさんいらっしゃる。みんなで集まる場にしたかった」と話します。
西中田第一町内会を中心に地域の関係機関が協力して始まった集まっぺクラブ。その言葉どおり、会場では年齢や役割の線引きはありません。こどもも、おとなも同じ空間で過ごし、「誰のための場か」を決めない居場所として形づくられてきました。特に、今回は柳生中学校父母教師会第一地区、柳生小学校子ども会第一地区の協力を得て、町内のこどもたちが一人でも多く参加してもらえるよう、声がけや準備を行いました。
世代が交わる「ごちゃまぜ」の時間

会の始まりでは「リノちゃん、ハルちゃん、フウタくん……」と、草野さんが参加者はもちろんスタッフまで、一人ひとりの愛称を呼び上げていきます。名前を呼ばれたこどもたちは、少し照れくさそうに、でも誇らしげに返事をし、会場全体から温かい拍手が送られます。
こうして一人ひとりを紹介し、拍手で迎えることで、参加者同士が自然と顔を合わせ、会場全体に「一緒に過ごす時間」が始まる空気がつくられていました。「あなたがここに来てくれてうれしい」「ここはあなたの居場所だよ」というメッセージが、拍手の音に乗って一人ひとりに届けられているようでした。

この日のプログラムでは、みんなで楽しめるゲームやクリスマスソング合唱などのほか、食事の時間も組み込まれていました。会場の熱気を「食」で支えていたのは、町内会の料理上手な方たち。長年この地域に住む皆さんがつくったのは、小麦粉を練って薄く伸ばした「はっと」という平たい団子を、醤油仕立ての出汁と季節の野菜やきのこなどと煮込んだ、宮城の郷土料理「はっと汁」。さらに、ふっくらと炊きあがった三升のご飯も用意されました。
ご飯は、会場のみんなでおにぎりをつくって食べます。「上手に握れたね」「おかわりはいる?」──そんな声があちこちから聞こえ、自然と会話が生まれていました。

会場の一角では、小学4年生の息子さんと3回目の参加だという佐藤さん親子が、周囲のおとなたちと会話を交わしながら過ごしていました。
「震災を経験して、いざというときに地域の人と顔見知りでいられるかどうかは大事だなと思っていて。また、息子がおとなと話すのが好きなんです」と佐藤さん。
息子さんも、向かいに座った95歳の大先輩の話に耳を傾けながら、にこやかに相づちを打ちます。「いろんな人と話せるのが楽しい」と、照れくさそうに話してくれました。
さまざまな人の関わりが支える場

プログラムの合間や食後の時間には、あらかじめ細かく決められていない「空き時間」も大切にされています。その時間には、参加者同士で会話を楽しむ姿が見られるほか、ジュニアリーダーがバルーンアートをしたり、大学生ボランティアが宿題を持ってきたこどもたちに勉強を教えたりと、それぞれが思い思いの時間を過ごします。
高校2年生のすずあさんは「普段はジュニアリーダーとして、こどもと関わる機会が多いのですが、ここは小さい子から高齢者まで一緒に関わることができて、とても楽しいです。『はっと汁』もすごくおいしかったです」と笑顔で話します。

大学生ボランティアは、集まっぺクラブの立ち上げ当初から継続して関わってきました。会で歌う歌詞をあらかじめホワイトボードに書くなど、準備の段階から場づくりに加わっています。保護者や地域の方からは、「一緒に遊んだり、宿題を見てくれたりして本当にありがたかった」という声も聞かれ、こどもたちにとっても、おとなたちにとっても、心強い存在となっています。
こうしたジュニアリーダーや大学生ボランティアの関わりは、仙台市社会福祉協議会太白区事務所のコミュニティソーシャルワーカーである、岩切拓朗さんが、人と人をつないできたことから生まれました。岩切さん自身も当日、運営の一員として場に加わっています。
また、隣室には、太白区保健福祉センターや仙台市社会福祉協議会太白区事務所、西中田地域包括支援センター、向日葵ライフサポートセンターによる、健康や暮らしに関する相談ができる場も設けられ、誰でも気軽に立ち寄れるよう工夫されていました。結果として相談へのハードルが下がり、顔なじみの関係の中で交わされる何気ない会話が、地域のセーフティネットとして機能していました。
集まっぺクラブは、運営を支える人たちを含め、さまざまな立場の人の関わりによって成り立っている場でもあります。
信じて任せる
鈴木会長に、運営で大切にしていることを尋ねると、返ってきたのはシンプルで力強い言葉でした。
「相手を“信じること”だね」。
「こんなことをやりたい」「こうしてみたい」。そんな想いを、まずは役員同士で共有し、その話が少しずつ周囲に伝わっていく。すると自然と、「じゃあ手伝いますよ」という声が集まってくると言います。
「だから、ほとんど口出ししないよ」と鈴木会長は笑います。
この「信じて任せる」姿勢があるからこそ、運営に関わる人たちも遠慮せずに意見を出し合い、「自分たちがまず楽しくあること」を大切にしながら場づくりに向き合うことができています。
地区社協の佐藤さんも、こう話します。
「会長は受け入れ態勢が本当にバッチリなんです。私たちも遠慮せずに意見を言えるし、最初は漠然としていても、だんだんひとつの形にまとまっていく。自由に話せる空気があるんです」。
一人ひとりの「やってみたい」や「できること」を信じて任せる。その積み重ねが、結果として、参加者が思い思いに過ごせる「ごちゃまぜ」の場を支えています。
受け入れられる経験が、次につながる

印象に残ったエピソードを聞くと、佐藤さんはこんなエピソードを教えてくれました。
小学校低学年の子が、おにぎりを握って近くの席にいたおじいちゃんに差し出したそうです。ところが、そのおじいちゃんはすぐに食べないため「どうして食べないの?」と聞くと、「持って帰って、仏壇のおばあちゃんにあげたいんだ」と答えたと言います。
「こどもがおじいちゃんを思って『握ってあげたい』と思った気持ちと、自分で食べるのはもったいないから仏壇にあげたい、というおじいちゃんの想い。そのやりとりが、とてもほっこりしたんです」と佐藤さんは振り返ります。
世代の違う人同士が自然に関わる中で、思いやりが行き交う──集まっぺクラブらしい一場面でした。
こうした関係が生まれる背景には、受け入れる側の姿勢があります。
集まっぺクラブの運営に限らず、鈴木さんは日頃から「信じて任せる」関わりを大切にしてきました。夏の暑い時期には、集会所をこどもたちに一部開放し、使い方や片付けも、話し合いながら任せてきたと言います。
「こどもには、こどもなりの考え方やルールがあるんだよ。だから私は、それを信用して、集会所の使い方を任せている」と鈴木会長は話します。やり取りを重ねるうち、こどもたちがふらりと会長を訪ねて雑談をしたり、困ったときに電話をかけてきたりと、自然な関係が育っていきました。
「受け入れる側の姿勢が大事なんだよ。最初の関わり方で、ここが安心できる場所かどうかが伝わるからね。だから集まっぺクラブでは、入り口に立って『いらっしゃい』って出迎えているんだよ」。
「いらっしゃい」と迎え、「信じて任せる」。
その積み重ねが、人を呼び、関係を育ててきました。集まっぺクラブは、こどももおとなもありのままでいられる、心地よい「ごちゃまぜ」の居場所として、これからも地域に息づいていくことでしょう。
©︎公益財団法人仙台こども財団